今回の修理はオートマチックの変速がおかしい気がするとの事でご来店されました。
スズキのMC21S型のワゴンRのK6Aターボの4速オートマです。
ひとまず試運転に出かけると、ちょっと走った感じでは一応変速もしますし走れるんですが、やはりちょっと変速がおかしい感じです。
変速系の不良と言う事で真っ先に疑われるのは、コントロール系等ですが、ニュートラル状態でミッションからあきらかに分かるガラガラ音。
ん~これはミッション内の機械的な故障っぽいわ(汗)
で、原因箇所を特定すべくミッションを分解!と行きたいところですが、時間的な余裕が無く中古ミッションを探す事にしました。
・・・が、中古のミッションが見つかりません。
この年式ぐらいになると、ミッションの不具合が多発し、まともなのが市場に無いとの事。
仕方なしにリビルト品の値段を聞くと、値段は10万以上!
こちらの車両、走行距離が14万キロで、お客様としては10万円以上かけてミッションを積み変えるのも・・・
かといって乗り換えるほどの資金も出せないし・・・との事。
どうしたものかと考えていると、ふと自社のスクラップに走行距離の少ない4速オートマの事故車がある事を思い出しました。
しかし、その車両はエンジンがF6Aでしかも4WD。
ん~普通なら合わんよなぁ・・・と考えながらも、一応車両を確認。
ケースに刻印されているミッションナンバーは一緒?!
と、言う事で2WDのK6Aターボーに、4WDのF6Aターボのオートマチックトランスミッションを乗せ替える事となりました。
故障車両の方からミッションを降ろします。
右上が故障したミッション、左下が乗せ替えるミッションです。
使う方のミッションから4WD用のトランスファー部分を取り外します。
取り外した2台のミッションを見比べると、外見はほとんど同じように見えますが、何箇所か違う部分を見つけました。
まずひとつは、ミッションケースのこの部分に、故障したミッションにはセンサーが取り付けれるようになっていました。
センサーの取り付け穴自体がもう一方には無いため、サイドカバーを取り外しました。
すると中のクラッチ部品のシャフトに信号を読み取るようになっている部分が違うようです。
そこでリバースクラッチを取り外し、ハイクラッチを付け替えします。
次に違う部分は右側のデフのドライブシャフトが挿してある部分です。
上が2WD、下が4WDです。
4WDの方は動力をトランスファーに伝えれようになっています。
ミッションケースを分解し、デフのリングギアを取り外します。
こちらが取り外したデフ部で、左が4WD,右が2WDです。
よく見てみるとリングギアの歯数が異なる事を発見・・・
2WDのリングギアを4WDのミッションに組み替えるには、ミッションの出力ギアから変えてこないといけなくなるようです。
そうなると、本当にミッションをバラバラにしないといけなくなり、時間と手間がかるため断念。
今回はリングギアはそのまま使いでデフ部を組み替える事によって対応しました。
やっぱり4WDと2WDではファイナル(終減速比)のギア比が異なるんだなぁ、と改めて発見。
その後組み替えたデフをケースに付けます。
ケースを元通りに組み、再びミッションを車両へと乗せる作業に移ります。
駆動関係、配線やケーブル類をすべて取り付け完成。
いざ試運転に出かけます!
走った感じは・・・・
変速など動作には問題が無さそうですが、やはりファイナルが違うためちょっと全体的にローギアっぽい気がします(汗
ミッションが変わった点をお客様に説明し納車となりました。
車両納車させてもらった後日、手が空いた時間に故障の原因を調べるためミッションを分解。
原因は3個あるプラネタリギアの一つがガタガタになっていた事によるものでした。
フロントキャリアASSYを取り外すと軸が取れてしまいました。
故障車両が入庫した時点ではプラネタリギアがガタついていたものの外れてはいなかったため、走行可能で変速がおかしい程度ですんでいたようです。
結論から言えば、今回の場合はフロントキャリアASSYを交換すれば修理が出来たと思います。
ただこの部品、結構高くて2万程するようです。
今回の修理ではリビルトなら14~5万かかるところが半分以下の修理代で済み、お客様には喜んでいただけましたが、思ったより手間がかかる事がわかりました。
次回同様の故障があればミッションの交換では無く、分解修理にチャレンジしてみようかと思ってます!