車の下から水みたいな物が大量に漏れて走れないとの連絡を受け、積載車にて現場に向かうと、なんと漏れているのはエンジンオイル。
この状態では自走不可能なので積載車に積み込み自社工場へ。
車は平成18年式MH21型のワゴンRターボ。
車両をリフトアップしオイル漏れの原因を調べると、ファンベルトの周りがオイルでベタベタ。
どうやらクランクシャフトプーリーのオイルシールが何らかの原因で破損し、オイルが噴出している状態になっていました。
原因を調べるため、まずはクランクプーリーを取り外してみます。
センターのボルトをゆるめようとすると・・なんとボルトが緩んでいました。
この車はタイミングチェーンなので、整備のため通常クランクプーリーのボルトを緩めるという事はありえません。
という事は自然に緩んだ?
ん~普通はありえません。
とりあえずクランクプーリーを外してみると、クランクシャフトの軸が入ってる部分が、キー溝もろともキレイに削れてしまっています。
また肝心のキーはというと、緩んだ為の振動で削れて役立たずの状態。
これではちゃんとクランクプーリーの回転中心が出ずオイル漏れして当たり前です。
オイル漏れの原因は分かったのですが、問題はクランクシャフトの軸が破損していないかです。
もしクランクシャフトが破損してるようなら、大掛かりなエンジンのオーバーホールが必要となり大修理となってしまいます。
そこで新品のクランクプーリーを先に取り寄せ、クランク軸の磨耗具合をしらべることにしました。
結果は差し込むのに硬いぐらいでしたので、クランクの方の磨耗は無さそうです。
とりあえず一安心。
ただ削れてしまったクランクキーを交換する必要があり、その為にはタイミングチェーンを取り外す必要があります。
タイミングベルトの交換は慣れていますが、チェーン交換はこれまで行う機会がありませんでした。
そこで修理書を取り出し順を追って作業することにします。
まずはタイミングケースが見やすいように、バンパーやヘッドライト等取り外します。
この中にチェーンが隠れています。
チェーンケースを外す為にはまずヘッドカバーを外し、次にオイルパンも外す必要があります。
さらにエンジンマウントも外す必要があるため、エンジンが脱落しないよう固定。
こちらがチェーンカバーを取り外した状態。
こちらがチェーンカバー。
カバーにオイルストレーナが付いているのは、ケースにオイルポンプが内臓されているためです。
こちらがクランクシャフトと残ったキー。
クランクプーリーの分がきれいに削れています。
肝心のクランクシャフトの軸はというと、多少の傷はあるものの、ほとんど磨耗は無さそうです。
これならクランクプーリとチェーンのかかっているスプロケット交換でいけそうです。
こちらが磨耗したキー。
こちらがスプロケットを外すため取り外した、タイミングチェーン。
スズキのK6Aエンジンはチェーンテンショナーが油圧式になっていて、オイルの油圧によりチェーンの張りを保ちます。
オイル管理が悪いとテンショナーがうまく作動せず、異音などの原因になります。
スプロケット、キー、クランクプーリーを新品にし、組み付けてゆきます。
再びクランクプーリーボルトが緩まないよう、しっかりと規定トルクにて締め付け修理完了。
最初にまさかクランクプーリーが緩むなんてと言いましたが、実はこの車がクランクプーリーのボルト緩みの点検サービスキャンペーンの対象車であることが判明。
この辺の年式のK6Aターボエンジンが対象になっていて、条件によってクランクプーリーのボルトが緩む事があるとの事で、緩まないように対策をするそうです。
そこでその事をスズキのディーラーに問い合わせると、5年前にすでに対策済みとの事で、クレーム対象にはなりませんでした。
ん~対策済みなのに緩んだ?なんだか釈然としないままの修理完了となりました。
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