お客様から「エンジンからすごい音がするのでコワくて乗れない!」との電話が。
自宅に出向きエンジンをかけてみると、カタカタと確かに音がします。
音はエンジンの回転をあげると、外からでもハッキリ分かるほどの打音です。
もしかしたらエンジンの内部?!
そうなると結構な修理代金になってしまいます。
その音はこんな感じです。
車両はL600型のムーヴ。距離は7万キロ台。
これまで当社に入庫整備の無い車でした。
この車、お客様に聞くと、1ヶ月ほど前に某ディーラー(D系ディーラではありません)で車検を受け、その時に結構な大修理をしたそうです。
もしかしたらそれが関係するかもと思い、車検の記録簿を拝見。
するとエンジンを車両から降ろすほどの整備暦がありました。
詳しい事情をお客様に聞くと、エンジンフレームが腐っていて危ないと言われ交換したとの事。
えっ!フレーム交換?
確かにムーヴのフレームは腐りやすいですが、危ないほどに腐るってどうなんかなぁ・・
でもそれだけお金をかけて車検をされたので、なんとかしてでも直さない訳にはいきません。
さらに音の原因を詳しく調べるため工場へ運ぶ事にしました。
工場で車両をリフトアップし異常個所をしらべます。
するとさっそく異常箇所を発見です。
普通は有るハズの物がそこに有りませんでした。
それはオルターネーター(発電機)を固定しているステーターボルトです。
音の原因はこのボルトの脱落により、オルタネーターが固定されず、振動でオルタネーターがエンジン本体と接触することで、あのような打音が発生したものと思われます。
なぜ今回はすぐに原因が特定できたのかというと、実は過去に同型のエンジンで、同様の不具合の修理をしたことがあり、その事をふと思い出し「もしかして」と調べてみたらそうだったと言う訳です。
色々と経験が役に立つもんです。
と余談はおいといて、肝心のそのボルトはどうなった?かと言えば
実はこのボルト抜け落ちたわけではなく、ボルトの先のネジ山部分から折れてしまっていました。
まぁ、これも経験済みなわけで、想定の範囲内だったワケなんですが(笑)
ということで、新しいボルトを取り付けるためには、その折れて残ったボルトの先を抜かないといけません。
抜くためにまずは残ったボルト先にドリルで下穴を掘ります。
と簡単に言いいましたが、場所が場所だけにすんなりドリルが入るような所ではありません。
エンジンのサイドメンバーが邪魔で、普通のドリルなら無理でしょう。
幸いうちの工場には角度の曲がったドリルがあり、狭いスペースでも穴を開ける事が出来ました。
こんなやつです↓
もしこの道具が無ければ、修理のためエンジンを車両から降ろさないといけない所でした(汗
ただこの道具があっても本当にスペースがギリギリで、エンジンを出来る限り下げないと作業が出来ません。
そこでエンジンの乗っているフレーム固定ボルトをエンジンが落ちない程度まで緩め、エンジンを限界まで下げなんんとか作業が可能となりました。
下穴がある程度空いたら、折れたボルトを抜き取る道具が登場。
と言っても単純なものですけどね。
こちらが取れたボルトの頭の部分です。
四角い短い箸のような物は、折れたボルト頭を抜き取る道具です。
はい、こちらが折れたボルト先の拡大。
うまく抜けて何よりです。
これさえ抜けてくれれば、あとは新しいボルトを挿入し固定するだけです。
これにて一件落着となりました。
ところでこのボルトが折れた原因を言ってませんでしたよね。
ダイハツのディーラーさんに問い合わせたところ、このボルトの締め付けが甘いと振動でボルトが動き、金属疲労で折れてしまうそうです。
なるほど。さすが餅は餅屋。良く知ってます。
折れる原因は分かりました。
じゃやあこうなったのどうして?
届いた新品のボルトに何やら注意書きのようなものが・・
「ちゃんと規定トルクで締めてくださいよ」ですって。
断定は出来ませんが、同様の故障事例がある事から推測するに、ボルトが緩んで折れやすいという構造上の問題が一つ。
そしてもう一つが締め付けトルクが甘かったという、人為的な問題。
これらの2つの問題が複合して今回の故障が起こったのだと思います。
原因の追究は、まるで犯人探しのミステリーのようですね。
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